今年度2020年は日本の英語教育の改革が新しくスタートを切った年と言えます。
長年の間、日本の英語教育については指摘が多く、問題視されてきました。
それが新しく変わろうとしています。
今年度より新学習指導要領が実施され、小学校でも英語が教科として授業に組み込まれる事になりました。
小学校では、英文法を教えることは無く
「What color do you like ?」「I want to play baseball.」など、会話形式で英語のフレーズをどんどん学んでいく方法で授業が進められています。
また2021年度からは中学校でも英語教育が変わることが決定しています。
・英語の授業中は指示、説明も含め原則英語でコミュニケーションする
・中学校3年間で学習する英単語数が1200語から1600~1800語になる
・今までの中学英語で学習してきた「聞く」、「読む」、「書く」以外に「話す」「発表する」ことを学ぶ
こういった英語教育の改革は、グローバル化に伴う英語の重要性が高まり続けているからであって、ビジネスだけでなくSNSや通信などを利用して海外のモノ、人と自由に交流できるようになった近年の中で世界共通語である英語は必要不可欠となったからです。
今後、このような状況はもっと拡大すると予想されます。
そんな中今まで、日本の英語教育はここ何十年もの間に大きな変化がなく、日本独自スタイルの英語教育を続けてきていました。
やっと今年度より改革を始めようとしているところなのです。
今回は、日本の英語教育の現状と問題点、今後について記事にまとめました。
ぜひ参考にしてください。
目次
日本の英語教育の現状はどうなっているのか
日本では第二次世界大戦後に英語教育が始まりました。
鎖国が解かれ、西洋から色んな文化や風習が入ってくるようになり、外来語も入ってきてアメリカ式の英語が教育されるようになったのが現在にまで至ります。
日本では義務教育の中学3年間、そして高校の3年間、大学の4年間で英語の授業があり、英語を学び勉強します。
そんな英語教育を受けている日本人の英語レベル、英語教育の現状はどうなっているのでしょうか。
10年間英語を勉強しても英語ができない
日本人は中学校から大学までの約10年も英語教育を受けて勉強しているにも関わらず「英語が話せない」「英語ができない」人がたくさんいます。
約10年かけて学んできた英語学習で出来る事と言えば、簡単な挨拶程度やお店の看板に書かれている英単語が何となく理解できるぐらいのレベルであります。
英語で書かれた洋書の本を読むことができたり、外国人と英語でコミュニケーションできるなどと言う事はほとんどの人ができません。
約10年間勉強した英語が実践では全く使えていないという現状なのです。
日本の中学生・高校生の英語レベルは目標以下
日本が国で掲げた目標として、文部科学省は中学生の間に英検3級、高校生の間に英検準2級レベルの英語力をつけることとしていますが、現実はそのような目標に全く到達できていません。
中学生で英検3級以上の英語力がある生徒の割合は全体の42.6%で、高校3年生では英検準2級レベル以上の英語力を持つ生徒の割合は全体の40.2%でした。
データを見ると中学校、高校ともに年々割合は上がってきていますが、国が目標とする50%には全く追いつけていないのです。
(参考:平成30年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果)https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/17/1415043_03_1.pdf
(参考:平成30年度 英語教育実施状況調査(高等学校)の結果)https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/17/1415043_04_1.pdf
英語を教える教師の英語力不足
日本人の中学、高校生が国の目標とする英語レベルに到達できていない背景には生徒に英語を教えている教師の英語力が不足していることも問題となっています。
国は英語の授業を教える教師の英語能力を英検準1級レベル求めることを目標としています。
しかし実際は上記の参考資料を見てもわかるように、中学校ではそのレベルに達する教師が全体の36.2%、高校では全体の68.2%という割合でした。
非常に少ない割合であることが分かりますね。
中学校では高校の教師の約半分、全体の約6割以上の教師が基準に達していないのです。
また、全体の約半分の教師は海外留学経験がなく、1年以上の長期留学の経験がある教師は全体の約9.1%という現状です。
授業で英語を話す機会がほとんど無い
英語の授業の中で文法や単語などの学習に時間を割いてしまって、実践で使える英会話の練習機会がほとんど無いことも大きな問題と思われます。
「書く」「暗記する」「読む」ということに重点を置いて、「英語を話す」という事がないため、せっかく覚えた単語や文章も書けるけれど話せない状況となっているのです。
英語でコミュニケーションができないと実践で会話は進みません。
海外の英語教育との違い
では日本の英語教育と海外の英語教育はどのような違いがあるのでしょうか。
日本の英語力は、アジア28カ国の中でほぼ最下位という現状が長く続いています。
なぜこのような事になってしまうのでしょうか。
英語が母国語ではない近隣アジア国(韓国、中国、東南アジア)での英語教育との違いをみてみましょう。
日本では日本語で英語を教えている
日本では英語の授業中も日本語で教えられています。日本語で英語を教えているのです。
しかし、近隣アジア諸国では英語は英語で教えられているのが一般的です。
教師も英語の授業中は英語で教え、指示します。
また、学校によっては数学など他の教科に関しても英語で教えているところもあります。
日本は英語学習の開始時期が遅く授業数が少ない
日本は2011年度より小学校5年生と6年生に英語の授業が行われていますが、他の諸外国はもっと前から小学校での英語教育が始まっています。
タイでは1996年に、韓国では1997年より、中国では2001年から小学校で英語教育が必修となっていました。
諸外国は随分前から小学3年生からの英語授業を始めていたのです。
このような状況からしても日本は諸外国よりも英語教育が随分遅れていると言えるでしょう。
また、授業時間数も諸外国に比べとても少ないようです。
特に小学校での英語の授業数は、日本では週1回であるのに対して、中国では週4回以上、韓国では週3回以上、台湾では週2回以上となっています。
日本の倍、3倍、4倍ですよね。
それを毎週行っていると他国と英語能力に差が出るのは当たり前のような気がします。
日本の英語教育の問題点とは
日本の英語教育の現状と海外の英語教育に歴然とした違いがあるのがわかりました。
ここで日本の英語教育の問題点をあげてみたいと思います。
英語を和訳している
日本での英語教育の現場では英語の文章を常に日本語に和訳しています。
私たち日本人には和訳して英語の意味を理解することも大切ですが、会話する際に和訳していてはスムーズに会話が進みません。
英語の文章を理解するのに英語で文章を読み、英語をそのまま理解する必要があります。
会話する際には文法などは気にせず、英語そのものがスッと入ってくる頭が必要なのです。
英語→日本語にきちんと和訳できなくても、相手の英文をしっかり理解して、それから自分の意見を英語で話できれば良いのです。
そのために英語学習の現場でも常に和訳をして意味を理解するのではなく、英語を英語で理解する習慣を身に着けさせるべきではないでしょうか。
受験用の英語教育が優先
日本の英語教育では「受験で使うから英語が必要」というイメージが強くあります。
そして学校の英語授業では文法学習を中心に行い、受験英語に偏りがちです。
英語を学ぶ本来の真意である「外国人と会話するためのコミュニケーション手段」ということは、ほとんど忘れられているのではないでしょうか。
その影響もあり、日本では受験が終わってしまうと英語を学習する目的が無くなってしまう学生がたくさん存在します。
そして、受験用英語ばかりを覚えていると実際の会話ではあまり使わない堅苦しい英文ばかりが身についてしまいます。
もっとグローバル時代に世界で活躍できる人材を育てる意味では実践的な英語学習が必要だと思われます。
受験用英語では文法や多少の単語ミスは許されず✕(バツ)となります。
それが身に染みついてしまっている我々日本人は、間違うことを恐れてしまいその結果、自ら英語を話すことができなくなるケースが多く見られます。
音声学習のインプットとアウトプットの授業がほとんどない
日本人の英語は発音が全然できていないと言われます。
外国人からすれば本当に日本人の英語は聞き取りにくいそうです。
それは英語の発音をきちんと教えられていないからです。
英文法を考えたり英文を作る知識は長年学習してきてたくさん持ち合わせているのに、学校での音声学習がとても少ないため、英会話となるとインプット(リスニング)もアウトプット(スピーキング)もできません。
日本の英語教育を受けても、正しい英語の発音を身につけることも、ネイティブ英語を聞き取ることもほとんど不可能に近いのが現状なのです。
正しい発音がどうなのかをよく分からないまま英語学習を進めても、外国人が話している英語は聞き取れないし、自分はカタカナ英語しか話せない状態なのです。
しかし、これには英語の発音が正しく教えられる教師が少ないという問題もあります。
まとめ【日本の英語教育の今後】
日本人が今後、世界の基準で活躍し生き延びていくためには、日本人の英語力を向上させることが必ず必要となります。
特に日本の若者はこれからの日本をリードしていく存在となりますので、英語の重要性について再度考えてみるべきです。
そのためには日本の英語教育をもっと根底から見直すことが不可欠ではないでしょうか。
✅海外留学を含め、若者と海外との接点を教育上でも増やしていく
✅英語教師の英語教育を強化する
✅「耳から聞く」「自ら話す」英語力を授業でも身につけられるようにする
など、こういった点については早々に改善していく必要があると感じます。