各国・地域において 新型コロナウイルス感染者数が増加し、世界保健機関(WHO)において「制御可能な世界的大流行(パンデミック)」を宣言するな ど、日々状況が変化しています。
世界中に蔓延した新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) によって、2020年に留学していた学生は帰国やオンライン学習を強いられ、また、これから留学するつもりだった学生は中止という辛い現実を突きつけられました。留学を学生生活に捧げ、大きな資金と時間を費やし、留学は夢であり将来のための投資という意識を持っているだけに、損失や挫折感は否めません。そんな学生たちに向けた支援はあるのでしょうか?今回いくつかピックアップします。
コロナウィルスによって帰国した留学生の数
日本学生支援機構によると、「海外留学支援制度」を利用した留学生の約3,300人の学生のうち、7割以上に当たるおよそ2,400人もの学生が新型コロナウイルス感染症の影響で帰国、または帰国予定であると公表しています。このほかにも、NPO法人が留学関係の事業者を対象に行ったアンケートの結果、約1,250人もの学生が帰国や留学の解約をしました。
正直なところ、帰国するという選択が賢明なのが現実です。留学先の国からの支援はあまり期待できません。学生の緊急支援策として60億ドル以上を出資するつもりのアメリカでは、留学生は対象外であると発表しています。留学生への救済措置や補助金はないところがほとんどです。金銭的な不安要素のほかに、休校によってビザの発給が停止されたり、 通学が条件である学生ビザはオンライン授業ではそれを満たせないという滞在資格の問題も出てきます。
帰国者向けの国からの支援
奨学金でお馴染み日本学生支援機構(JASSO)が帰国した以下奨学金受給者向けに10万円の支給をしています(JASSO災害支援金)。
- 「海外留学支援制度」(学部学位取得型、大学院学位取得型、協定派遣)
- 「官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」
【検疫強化対象地域】
- 2020年3月9日以降対象となる国:中華人民共和国、大韓民国
- 2020年3月21日以降対象となる国:ヨーロッパ諸国、イラン、エジプト
- 2020年3月26日以降対象となる国:米国
- 2020年3月28日以降対象となる国:インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、イスラエル、カタール、コンゴ民主共和国及びバーレーン
- 2020年4月3日以降対象となる国:その他上記以外全ての国・地域
申請方法は下記リンクをご確認ください。申請期限にご注意ください。
https://www.jasso.go.jp/ryugaku/study_a/202004shienkin.html
上記奨学金プログラムを受けていない留学生でも、 第二種奨学金(海外)を申し込むことは可能です。これは先ほどの奨学金とは違って貸し付けになるので、返還義務はあります。詳しくは公式サイトをご確認ください。
https://www.jasso.go.jp/news/1327624_1545.html
また、国からの支援以外にも、留学から帰国した学生を支援するためのクラウドファンディングも数々立ち上がっています。
帰国者・留学生向けの大学からの支援
日本の大学の留学プログラムを受けている学生は、日本の大学各々で対策を講じているかと思います。今回紹介するのは、アメリカの大学が 帰国を余儀なくされた日本人学生向けに行った事例です。テンプル大学の日本校は学生たちが受けているオンライン授業を帰国した日本人学生たちも特別に受けられるようにしました。実際にテンプル大学の講師が英語で授業を行っている動画を日本でも視聴できるようになりました。 オンライン授業は日本で英語力を保てる救済措置になります。取得した単位は他の大学でも適用できる場合があります。
また、 1年間入学を遅らせる「ギャップイヤー」制度は魅力的です。欧米ではもともと高校3年生が1年間働くなり旅行するなり勉強するなり自由に使える時間を選択することができます。今年は75%の学生が取得する見込みがあり、ペンシルベニア大学では、留学生にもこの制度を適用できるようにしており、今後こうした動きが広がる可能性もあります。
コロナに対する今後の留学システムへの課題と期待
1.オンライン授業の普及
日本に比べると欧米では義務教育の世代からすでにオンライン学習が普及しています。コロナで休校に追いやられた時も日本より早くオンライン授業に切り替えていました。ドイツの中高生のクラスではMicrosoftのTeamsを使って連絡や課題をしている学校もあります。留学が中止や延期になった学生向けにテンプル大学のように留学で受講できるはずだった授業を公開するなどすべての学校で迅速に行われるべきです。留学できなくなっても、留学するはずだった期間中にできるだけ留学に近い英語の環境をオンラインで提供できるよう学校側からのケアと補償が必要になってくるでしょう。バーチャルな留学は、時間と費用を節約できるメリットもあるため、新しい留学スタイルが確立される期待があります。
2.海外インターンシップの普及
オンライン授業はあくまで座学のため、経験値に欠けます。就活では体験や行動が求められるので、海外で経験が積める短期のインターンシップをあわせて実施できるプログラムがあると学生には心強いです。高校生から社会経験として最近人気が出ているようです。インターンシップを通して短期で実践的なスキルやビジネスマナーを習得できるプログラムは、今後需要が見込めるでしょう。
3.海外留学希望者数の増加
コロナウィルス感染症による自粛により、今後のキャリアや夢を家で一人で考えたり、自分と向き合う時間が増えたと思います。また、家にいる期間が長かったことから安全が確保された安心感と開放感で海外に行きたくなる衝動も出ると思います。渡航可能な時期に入れば留学する人が増えるかもしれません。
過去に同様に留学ができなかった事例として2003年のSARSや2011年の東日本大震災でも翌年は例年以上に留学生数が増えました。新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛中、キャリアや人生、幸福について見つめあい、どのような環境が適しているか考え、留学という選択をする人もいるでしょう。
まとめ
今年の留学を諦めざる負えない学生にとって、外出自粛によって家にいるからこそ、自分を見つめ直す時間が多く、今何ができるのか、そしてこれからどうするか試される時です。金銭的対価は取り戻せないでしょうが、 この期間を諦めたり自分の中で捨てないで今をどう乗り越えるか、今後どう行動していくかがカギになります。
少しでも金銭的な負担が軽減できるよう、奨学金やクラウドファンディングの情報を積極的に集めて行動することが大事です。
このコロナウィルス感染症の蔓延がいつまで続くのか、毎年インフルエンザのように続くのか不透明ですが、一度経験した教訓を活かしてオンライン授業の普及や留学者への補助金・補償を見直し、コロナウィルス感染症の流行に乗り越えられる留学システムの対策と確立が必須であると、今回多くの被害を受けた留学帰国者や留学希望者を見て気づかされました。